繰越欠損金が発生した場合の法人税の処理方法
2009年09月10日 06:47
前期は黒字、当期は赤字と言う場合、当期の赤字を前期の赤字と相殺して、法人税の還付を受けることができます。今日のメルマガでは、この注意点を解説します。
○○さん、朝4時起きの税理士見田村です。
いつもありがとうございます。
さあ、今日の1分セミナーは
「欠損金が発生した場合の選択基準」です。
リーマンショック以降、急に赤字になった会社もあります。
つまり、「赤字=欠損金が発生」ということです。
そして、資本金が1億円以下の中小企業の場合、下記のいずれかを選択できます。
○欠損金を前期の黒字と相殺し、納付済みの税金を還付してもらう
→前期が黒字で、納税していることが前提
○欠損金を繰り越し、翌期以降の黒字と相殺し、税金を減らす
では、どちらを選択した方が得なのでしょうか?
実際に、比較してみます。
(1)前期の黒字と相殺した場合
(前提条件)
○前期の黒字は800万円(税率22%)
→前期は「800万円×22%=176万円」を納税
○当期の欠損金は800万円
この場合、「前期の黒字800万円」と「当期の欠損金800万円」が相殺されるので、「納付済みの176万円が還付」されます。
この「176万円」と「下記の2つのパターン」を比較します。
(2)欠損金を繰り越し、翌期以降の黒字と相殺した場合
(パターン1)
○当期の欠損金は800万円
○翌期の黒字は800万円
ちなみに、法人税の税率は
○800万円以下・・・18%(改正により22%→18%)
○800万円超・・・30%
となっています。
だから、前期の欠損金が無ければ、当期の納税額は「800万円×18%=144万円」となります。
つまり、この144万円を支払わずに済んだのです。
これを上記(1)の前期の黒字と相殺した場合と比較すると
○前期の黒字と相殺した場合・・・176万円が還付
○欠損金を繰り越した場合・・・・144万円を支払わずに済んだ
となります。
だから、この場合は「前期の黒字と相殺した方が得」となります。
次に、欠損金を繰り越し、かつ、翌期の黒字がもっと大きかった場合の試算をしましょう。
(パターン2)
○当期の欠損金は800万円
○翌期の黒字は3,000万円
既に解説したように、法人税の税率は
○800万円以下・・・18%(改正により22%→18%)
○800万円超・・・30%
となっています。
だから、この事例で【前期の欠損金が無ければ】、
○800万円×18%=144万円
○(3,000万円−800万円)×30%=660万円
○合計804万円
となります。
ただし、実際には、前期の欠損金と相殺します。
だから、当期の黒字は
「3,000万円−800万円=2,200万円」となります。
そして、税金を計算すると
○800万円×18%=144万円
○(2,200万円−800万円)×30%=420万円
○合計564万円
となります。
だから、この場合は「804万円−564万円=240万円」が減った税金になります。
これを上記(1)の前期の黒字と相殺した場合と比較すると
○前期の黒字と相殺した場合・・・176万円が還付
○欠損金を繰り越した場合・・・・240万円を支払わずに済んだ
となります。
だから、この場合は「欠損金を繰り越した方が得」なのです。
ただし、よく考えて下さい。
○翌期が黒字になるとは限らない
○翌期が黒字だったとしても、黒字の額は分からない
○翌期以降も赤字の可能性もある
○翌期以降の7年間が赤字なら、最初の欠損金は切り捨て
○黒字になったのが7年後の場合、それで得したと言えるのか
→時間が経ちすぎているから
○今の資金繰りを重視した方がいい場合もある
○税制改正で、税率が下がる可能性もある
→民主党が政権を取ったため、次の税制改正は大きく動く可能性が高い
→上記の試算において、得する金額が減る可能性がある
そうであれば、前期の黒字と相殺し、すぐに還付される方がいいのではないでしょうか。
もちろん、これは会社の考え方によります。
しかし、来期以降のことは誰にも分かりません。
全ては結果論です。
だから、「前期の黒字と相殺し、税金を還付してもらった方がいい」と考えるのです。
いかがでしょうか。
ちなみに、この「税金を還付してもらう制度」は今年の2月1日以降に終了する事業年度から適用できます。
もし、○○さんの会社が「前期は黒字」、「当期は赤字」ならば、是非、考えてみて下さい。
投稿者: 節税のことなら東京都港区の税理士、(株)日本中央会計事務所、日本中央税理士法人