退職を考えた役員報酬の決定と役員退職金規定の重要性
2010年03月30日 09:59
節税や事業承継、死亡などのタイミングで役員が退職することがありますが、役員退職金規定を作成している会社は、あまり多くはありません。
今回のメルマガでは、役員退職金の金額を巡り実際に裁判で争った判決を参考にしながら、退職を考えて役員報酬を設定する重要性を説明致します。
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朝4時起きの税理士 見田村です。
いつもありがとうございます。
先々週、先週と2回に渡り、
修繕費と資産計上の判定について解説しました。
ところで、税務調査でここが論点になった場合、
税務調査官は何を見て、何を考えているのでしょうか?
それは請求書、見積書などを見ながら、
「改良、改造、強化、補強」などの文字を探しています。
当たり前ですが、修繕をした工事業者は税務を意識していないため、
そんなことは考えずに見積書などを作成します。
その結果、資産計上をにおわす言葉を使ってしまうことがあるのです。
そして、税務調査官は「これらの言葉」を探しているのです。
さらに、「これらの言葉」が否認の根拠になる可能性もあるのです。
だから、固定資産を修繕した金額が
○ 修繕費として経費になるものである
○ 修繕費か、資産計上か、微妙な要素がある(実務上、よくあります)
ならば、これらの言葉は使わない方がいいのです。
もちろん、最終的には実態判定です。
しかし、税務調査官は見積書などから具体的な言葉を探しているのです。
そういう税務調査官の「思考パターン」、「行動パターン」を
知ることは非常に大切なことです。
しかし、多くの会社がこれを知らないまま、
真正面から税務調査を受け止めています(正攻法すぎます)。
税務調査は心理戦である要素が多分にあり、
意識的にテクニックを駆使していくことが非常に重要なのです。
「敵を知り、己を知れば、百戦危うからず」です。
4月以降は税務調査が増える季節です。
皆さんが「そろそろ来るかもしれない」と思われるなら、
下記DVDで税務調査官の「思考パターン」と「行動パターン」を
しっかりと身に付けておいてください。
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では、今日の1分セミナーにいきましょう。
今回は「その役員退職金は過大か?」です。
不動産の賃貸、管理を行っているA社の創業社長が
自社ビルの屋上での作業中に転落し、死亡しました。
そこで、A社は役員退職金として9,100万円を支払いました。
しかし、これが税務調査で「過大」とされ、争いになったのです。
ちなみに、9,100万円の内訳は下記のとおりです。
○ 基本退職金 2,000万円
○ 弔慰金 5,000万円
○ 特別加算退職金 2,000万円
○ 葬儀費用負担金 100万円
A社、税務署、裁判所の主張、判断は下記の通りです。
(A社)
退職に至った特殊事情などもあるため、役員退職金は適正である
(税務署)
○ A社と同地域における同業他社の役員退職金の調査をした
○ 功績倍率※は最高3.18、最低1.30であった(平均2.30)
※ 役員退職金規定に定めるもの
→ 役員退職金は一般的に下記の計算式で計算される
→ 最終報酬月額×在籍年数×功績倍率(今回の最終報酬月額は50万円)
→ 50万円×11年×2.30=1,265万円が適正額
(裁判所)
○ 抽出した同業他社のデータは4法人5事例に過ぎない
○ 功績倍率の最高値3.18と最低値1.30には開きがある
○ 最高値3.18と平均値2.30の差は少ない
→ 「功績倍率の平均値を超えれば過大」というのは合理的でない
→ 3.18が特別な数値ではない
○ 創業社長であることも考慮すべき
○ 最終報酬月額の3年分(1,800万円)は妥当
→ 相続税においても、課税されない
○ 役員退職金の適正額は3,650万円
→ 退職金 50万円×11年×3.18=1,750万円(端数処理)
→ 弔慰金 1,800万円
→ 葬儀費用負担金 100万円
細かい流れは書きませんでしたが、この判決で興味深いところは、
争いが進むにつれ、役員退職金の適正額が大きくなっている点です。
○ 税務署が否認した適正額・・・1,265万円
○ 異議申立てをした結果の適正額・・・3,065万円
○ 国税不服審判所がいう適正額・・・3,065万円
○ 福島地裁がいう適正額・・・3,165万円
○ 仙台高裁がいう適正額・・・3,650万円
結果として、9,100万円のうちの半分以上が否認はされましたが、
争った結果、適正額が上がっていったことは注目すべき点です。
なお、これは最高裁では上告不受理となったため、
仙台高裁の判決で確定しました。
いかがですか?
節税、事業承継、死亡などのタイミングで役員が退職することがあります。
しかし、役員退職金の明確な計算方法は税法上、決められていません。
だからこそ、自分の会社としての根拠をきちんともち、
計算することが重要なのです。
一般的な計算方法である「最終報酬月額×在籍年数×功績倍率」を
採用するなら、いつ退職になってもいいように準備しておくべきです。
役員退職金規定も作り、役員報酬も退職を考えて設定しておくべきです。
これが争いを避けるコツです。
それから、もう1点考えて頂きたいことがあります。
それは今回の事例で
○ 最初の申告が昭和62年
○ 最高裁で上告が不受理とされたのが平成10年
ということです。
約11年の歳月がかかっているのです。
税務調査の結果について争うべきことは争うべきです。
しかし、
○ 労力、精神的負担
○ 弁護士費用、税理士費用などの金銭的負担
○ そのパワーを未来の業績を上げることに向ける意味
のバランスを考えて争うべきです。
世の中には、これを無視して争っている事例もあります。
しかし、争っても負けてしまう確率は高いのです。
だからこそ、
○ 税務調査で否認されないように日頃の処理に注意すること
○ グレーゾーンの判断をする場合、戦える根拠を残しておくこと
→ 強引すぎる判断はしない
○ 争う場合は「何が大切か」というバランスを考えること
が重要なのです。
4月以降は税務調査が増える季節です。
このことをきちんと覚えておいてくださいね。
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