事業承継と株主の分散対策
2010年09月28日 08:23
今回のメルマガでは事業承継に伴い、贈与税を相続税に転換して節税する方法を解説します。
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朝4時起きの税理士見田村です。
いつもありがとうございます。
9月は「決算を迎える会社」、「税務調査を受ける会社」が多い月です。
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では、今日の1分セミナーにいきましょう。
今回は「中小企業の事業承継のポイント」です。
まずは、以前に書いたメルマガの復習をしましょう。
<ここから復習>
中小企業の場合、経営者一族以外に株主がいることは好ましくありません。
なぜならば、相続を繰り返す度に株主がさらに分散し、
経営がやりにくくなる可能性があるからです。
しかし、世の中には先代からの相続を受け、
株主が既に分散してしまっている会社もあります。
兄弟が共同で出資して設立した会社もあります。
では、そういう会社はどうしたらいいのでしょうか。
ちなみに、兄弟2名が株主(50%ずつ)で、
2人で経営している会社であっても「既に」大きな問題を抱えています。
例えば、兄が社長、弟が専務としましょう。
確かに、今は兄弟の仲も良く、会社経営にも問題はありません。
しかし、2回相続が起こり、代変わりした状況(下図)を考えてください。
兄―子―孫(兄の孫が現社長)
弟―子―孫(弟の孫は単なる株主)
2回の代変わりをした結果、
兄の孫が「現社長」、弟の孫が「単なる株主で経営に関係の無い人」に
なったとします。
すると、現社長からすると【おじいちゃんの弟の孫】が
株主になってしまうのです。
大人になってもその人とまだ付き合いはあるでしょうか。
私の場合は子供の頃に遊んだ記憶がある程度で、
街ですれ違っても分かりません。
しかし、将来的にそういう人が経営に口を出す可能性があるのです。
現時点の兄弟で経営し、かつ、株式も50%ずつ持っていることは
その入口にある危険な状況なのです。
このように株主が分散している状況の解決策は、
(1)弟から兄に株を贈与する
(2)弟から兄に株を売却する
(3)弟が遺言を書き、弟の株が兄(または、兄の相続人)に渡るようにする
(4)弟の株を会社が買い取る
等の方法が考えられます。
ただし、財務状態の良い会社ならば株価が高いので、
(1)の贈与という方法では贈与税が多額になります。
(2)の売買でも個人の負担額が高額になります。
(3)の遺言を書くとなると大袈裟な問題になる可能性もあります。
そこで、1つの対策として(4)の会社が買い取る方法が考えられるのです。
ちなみに、会社法では会社が自己株式を買い取るための措置が講じられています。
それは定款を下記のように変更することです。
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第○条
当会社は、相続その他の一般承継により当会社の株式を取得したものに対し、
当該株式を当会社に売り渡すことを請求することができる。
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これは商法には無かった規定なので、
社歴の長い会社はこの対策ができていない可能性もあります。
ご確認くださいね。
こう変更しておけば、相続が発生しても、
会社は相続人に対して株式の売り渡し請求をし、買い取ることができるのです。
この結果、株式が経営者一族以外に分散することを防ぐことができるのです。
もちろん、買取価格はその時の財務状態や売り手との交渉によって
変わってきます。
ただし、買い取ること自体は【会社の権利】なので、
【必ず】買い取ることができるのです。
最低限でも経営に関係のない人が株主になってしまうリスクを
防ぐことができるのです。
なお、これはあくまでも権利なので、行使するかどうかは会社の自由です。
しかし、この記載が定款に無い場合、
相続が発生しても会社は相続人から買い取る権利はありません。
だから、買い取るためには相続人と相対の交渉をするしかなく、
相続人はこれを拒否することもできます。
だから、この条項を定款に入れておき、
最低限のリスクを回避しておく必要があるのです。
ただし、社長である兄の方が先に他界した場合、
弟が先導して兄の相続人から兄所有の株式を買い取ることもできるという側面もあります。
社長の相続をきっかけに会社を乗っ取られるというリスクもあるので、
そこはいわゆる「両刃の刃」とお考えください。
置かれている状況、株主の関係によりやるべき方法論、リスクは変わってくるので、
注意が必要です。
<ここまで復習>
では、今日は別の観点から解説してみます。
それは「死因贈与」という契約を兄と弟で取り交わすということです。
死因贈与とは「私が死んだら、○○を贈与する」という契約です。
この場合で使うならば、
「弟が死亡したら、弟の株は兄(または、兄の相続人)に贈与する」
という契約です。
ちなみに、死因贈与によりもらった財産は贈与税ではなく、
相続税の課税を受けることになります。
ただし、相続税の場合、遺産全体から控除する多額の基礎控除額※もあります。
※基礎控除額=5,000万円+1,000万円×相続人の数
だから、相続税の納税は多額にならない可能性もあるのです。
これであれば、兄と弟が合意し、契約書を取り交わすだけで成立する話です。
弟の相続人も関係ありません。
株主が分散している会社は1つの方法として覚えておくといいでしょう。
また、これ以外ににも事業承継には様々な対策があります。
特に、以前に解説した「非上場株式の相続税、贈与税の納税猶予、免除」
は非常に有効な方法です。
○株主の分散
○高額な株式の事業承継
は「中小企業の経営」と「社長一族の個人財産の確保」にとって大きな問題です。
この2つが課題になっているならば、
【できるだけ早く】対策することが必要です。
この問題に関して、日本全国からご相談がありますが、
正直、私にお会い頂き、初めてリスクの大きさを実感される方もいます。
逆にいえば、今までは「まあ、そのうちに解決しないと」というレベルで
考えていたわけです。
しかし、事態はそんなに甘いものではありません。
利益を計上すれば、株価は上昇していきます。
この株式を買い取る場合、購入資金も多額に用意しなければなりません。
また、代替わりをすれば、人間関係が複雑になる可能性もあります。
だからこそ、事業承継の問題は【できるだけ早く】対策をすべきなのです。
もし、あなたが「そのうちに解決しないと」と思われているばらば、
早めの対策をする必要があるのです。
これはしっかりと胸に刻んでおいてくださいね。
本当に事態が悪化してから、ご相談にいらっしゃる方が多いのです・・・。
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