逆養老保険を使った節税の注意点
2012年11月13日 14:35
逆養老保険の保険料を年払いで払った場合の経費処理では、逆養老保険は役員だけが加入するケースが多いので「年払いの役員給与=役員賞与」となり、経費にならないのでしょうか。
今日のメルマガでは、逆養老保険を年払いした場合の経費の流れを法人税基本通達を参考に、「経費になるのか、ならないのか」、「どの期の経費になるのか」を詳しく解説していきます。
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では、1分セミナーにいきましょう。
今回は「逆養老保険の注意点」をお伝えします。
皆さんは「逆養老保険」という節税に使う生命保険をご存知ですか?
以前にもこのメルマガでこの節税対策の注意点を解説しました。
ただ、世の中であまりにも問題になっていないので、
私も勘違いをしていたことがありました。
今日はその訂正も含めて記載いたします。
まずは、逆養老保険の復習からです。
平成24年1月13日にこの逆養老保険に関する最高裁判決が出てから、
生命保険会社数社がこの逆養老保険の販売に力を入れています。
しかし、その加入には大きな注意点があるので、
これを覚えておいて欲しいのです。
まずは養老保険について復習しましょう。
一般的な養老保険(法人契約)は
○ 満期保険金・・・法人が受取人
○ 死亡保険金・・・遺族が受取人
というものです。
そして、経理処理は
○ 満期保険金に対する保険料・・・保険積立金(資産)
○ 死亡保険金に対する保険料・・・保険料(経費)
となります。
つまり、1/2は資産、1/2は経費ということです。
では、逆養老保険はどうかというと、
○ 満期保険金・・・本人が受取人
→ 満期の場合、まだ本人が生きているので、遺族が受取人ではない
○ 死亡保険金・・・法人が受取人
という逆にしたものです。
そして、経理処理は
○ 満期保険金に対する保険料・・・本人に対する給与(経費)
○ 死亡保険金に対する保険料・・・保険料(経費)
と「考えられてきた」のです。
なぜ、「考えられてきた」と書いたかというと、
法令や通達の中に明文規定が無かったからです。
結果として、逆養老保険は「給与+保険料」なので、
「支払時に全額が経費になる」と運用されてきた面もありました。
ただし、上記の最高裁判決(補足意見)の中で
「給与として処理することの事実上の容認」と理解できる記載があります。
結果として、
○ 満期保険金に対する保険料・・・本人に対する給与(経費?)
○ 死亡保険金に対する保険料・・・保険料(経費)
ということになります。
この上段で「?」と付けたことには意味があるので、
後で解説します。
さあ、前置きが長くなりましたが、ここからが本番です。
では、この保険料を「年払い」で支払った場合はどうなるのでしょうか?
通常、逆養老保険は役員だけが加入するケースが多いので、
「年払いの役員給与 = 役員賞与」となり、
結果として、経費にならないのでしょうか?
いえ、それは違います。
なぜならば、
○ 役員のグリーン車の定期券(6ヶ月定期)
○ 役員が負担すべき生命保険料(年払い)→ 今回の内容
などを会社が負担している場合、それは通常の役員報酬でOKだからです。
こういう経費の考え方は
○ 毎月の支払いかどうかは関係ない
○ 役員が実際に受ける経済的利益が毎月おおむね一定かどうかで判定
となります。
これは法人税基本通達の趣旨説明の中に明記されています。
だから、給与になる保険料は年払いであっても、
「全額が給与に【は】なる」のです。
しかし、ここで「大きな問題」があります。
なぜならば、全額が給与になることはOKとしても、
下記の2つの論点があるからです。
○ 役員に対する給与には「経費になるもの」と「ならないもの」がある
→ 通常は役員に対する給与は期首から3ヶ月以内に改定
→ 特別な理由なく途中で増やしたら、増額部分は経費にならない
○ 経費になるとしても、それがどの期の経費なのか?
だから、上記では「?」と記載したのです。
ちなみに、「保険料等の翌期の経費を今期中に支払えば、当期の経費でOK」
という通達があります。
だから、保険料として処理する部分に関しては
「単なる経費」ということで問題ありません。
しかし、給与として処理する部分は下記の2つに分かれ、
それにより取扱いが分かれます(期末近くで加入した前提)。
○ 当期に対応する部分
→ 給与ではあるが、そこから役員報酬が増えることになる
→ 増額する改定が期首から3ヶ月以内ではない
→ 結果として、給与にはなるが、全額が経費にならない
→ 翌期以降の経費にもならない(=経費になる機会がない)
○ 翌期に対応する部分
→ 今期は前払費用として貸借対照表に計上
→ 翌期の役員報酬として、経費に計上
なお、役員報酬に関しては、保険料のように
「翌期の経費も今期中に支払えば、当期の経費でOK」
という通達の取り扱いがありません。
実際、「役員報酬の年払いにはこの通達の適用なし」ということで
納税者が負けています(平成15年2月20日 国税不服審判所)。
お金であれ、保険料であれ、役員報酬という意味では同じだから、
「翌期の経費も今期中に支払えば、当期の経費でOK」
という通達の適用は無いのです。
結果として、
○ 給与として処理した部分(当期分)・・・経費にならない
○ 給与として処理した部分(翌期分)・・・翌期の経費になる
○ 保険料として処理した部分・・・全額が経費になる
ということです。
これを具体的な数字で解説すると、
年払いの保険料240円(期末月に加入)という場合、
○ 当期分の給与10円は経費になる機会がない
○ 翌期分の給与110円は翌期の経費
○ 保険料120円は当期の経費
ということです。
ちなみに、当期で給与とされるのは10円ですが、
源泉所得税は給与となる総額120円に対する額が必要になります。
社会保険料も同様です。
ここも注意が必要な部分です。
これが正しい処理となります。
実際、「役員給与課税の重要点解説」(大蔵財務協会)でも
年払いの養老保険を題材にし、同じ旨が記載されています。
しかし、世の中では「単純に全額が経費でOK」ということで、
リスクの意識が無いままに加入している会社が多いことも事実です。
しかし、それは間違っているので、
加入する際は充分な検討をする必要があるのです。
ただし、逆養老保険に限りませんが、
「給与となる生命保険に期の途中や期末で加入したので、否認された」
という話を聞いたことがありません。
また、逆養老保険に関して、
ここまでの理論構築ができている税務調査官は【極めて】少ないでしょう。
だから、【現状では】実際に否認されるリスクは
かなり低いと推察されます。
私見にはなりますが、
100事例あったら、99事例以上は否認されないのが現状でしょう。
どこかで納税者が負けた事例が出た場合の波及効果は大きいですが・・・。
そういう事例が出なければ、このまま流れていくと推察されます。
ただし、リスクがあることは事実なので、
皆さんが逆養老保険を検討する場合、
このメルマガを読み直して頂き、ご判断頂ければと思います。
なお、今回のメルマガは「給与+保険料」で処理する場合を
解説しましたが、「役員への貸付金+保険料」で処理する場合もあります。
ただし、この場合は貸付金ということでそもそも経費にしていないので、
上記の問題に発展することはありません。
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■編集後記
今月はすごくハードな月となりました。
これから新刊の原稿チェックもあるし、京都、屋久島への出張もありますが、
頑張ります。
12月になったら少しゆっくりするかと思い、
スケジュールを見たら、既に空いている日が数日しかない・・・。
まあ、今年の年末年始は9連休なので、
そこでゆっくりすることにします(笑)。
投稿者: 節税のことなら節税専門の税理士、(株)日本中央会計事務所、日本中央税理士法人