相続税の重加算税の計算と判断基準
2014年11月10日 14:54
相続税の税務調査があり、隠ぺいや仮装があったとして、重加算税が課される場合、
その重加算税の計算は「本税×35%(無申告の場合は40%)」となります。
重加算税については国税不服審判所、税務訴訟において争点となることも多いですが、
それが賦課される場合、賦課されない場合の判断基準はどうなるのでしょうか?
過去の裁決(平成9年12月9日、平成23年9月27日)を通じ、重加算税が賦課される
判断基準を解説していきます。
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朝4時起きの税理士 見田村です。
いつもありがとうございます。
今回は「相続税に対する重加算税の判断を分けた基準は?」をお伝えします。
相続税の税務調査があり、申告書に記載されていない財産があった場合、
それが重加算税の対象になるのか?ならないのか?ということが争点に
なる場合があります。
今日、解説する事例は同じ申告書の中において、
○ 計上されていない財産A・・・重加算税の対象
○ 計上されていない財産B・・・重加算税の対象でない
と判断された事例です(平成23年9月27日裁決)。
まず、この事案の前提条件です。
○ 平成20年9月〇日(伏字):相続開始日
○ 相続税の申告書には「現金50万円」が計上されていた
○ 申告書に載せた預金額は相続開始日の残高証明書の金額
→ 平成20年6月〜9月:相当回数に分けて、約4,370万円の現金の
引出あり(被相続人は入院中)
○ 平成20年7月〇日:農協の口座(被相続人名義)に99万円の現金
入金あり
○ 平成20年8月13日:農協の出資に対する配当金1,689円あり
○ 平成20年12月5日:農協の口座が残高不足になり、水道料金の
引落しができなかくなり、相続人はに引落口座の変更手続きをした
そして、これらの財産(現金、農協の貯金、農協の出資金)が否認され、
これら全ての財産が計上されていなかったことについて重加算税が課され、
重加算税について争われた事案です。
なお、
○ 引き出された現金は被相続人宅の寝室のたんす内に保管されていた
○ 税務調査の際、納税者は「50万円以外に現金は無い」と回答
という状況です。
この状況の中、国税不服審判所は下記と判断したのです。
○ 現金について
・ 被相続人の入院中に相続人が現金を引き出している
・ 現金を保管しているにも関わらず、税理士と税務調査官に対して、
虚偽の答弁をしていたことからすると、隠ぺい、仮装に該当する
・ 重加算税の賦課は正当である
○ 農協の貯金について
・ 平成20年12月5日に水道料金の口座振替先を変更しているため、
この貯金の存在を認識していたはず
・ 税理士から被相続人に関する全ての残高証明書の提出を求められて
いたが、残高証明書の発行を依頼せず、税理士に貯金の存在を知らせ
なかった
・ 重加算税は正当である
○ 農協の出資金について
・ 相続人は農協の貯金の存在を認識しており、この口座に出資金の配当が
振り込まれているから、この出資金の存在を認識していた可能性はある
・ 配当金は少額であること
・ 「口座開設=出資金が必要」ではない
・ 出資証券と貯金通帳とは別個に存在する
・ 相続人がこの貯金の存在を知っていた事実や出資金に係る配当金が
農協の口座に振り込まれていた事実があるからといって、必ずしも
相続人が出資金の存在を認識していたということはできない
・ 重加算税の賦課を取り消す
・ 税務署は「『相続人が農協との取引の存在を認識していた』と主張する
のみで、相続人が出資金の存在を認識していたとする具体的な事実を
何ら示していない
いかがでしょうか?
今回の相続人には相続財産を故意に隠そうという意思はありましたので、
現金と農協の貯金に関する重加算税は仕方がないでしょう。
しかし、農協の出資金に関しては「隠ぺい、仮装の意図がないこと」、
「税務署側が具体的な立証をしなかったこと」により、重加算税が
取り消されています。
これとは別の事例(平成9年12月9日裁決)でも「税務署の主張は、
納税者が意識的な過少申告を行ったものであるというにすぎず、隠ぺい又は
仮装であると評価すべき行為について、何らの主張及び立証をしておらず、
貸付金について隠ぺい又は仮装の事実を認めることはできない。」として、
重加算税を取り消しています。
なお、裁決文には書かれていませんが、実は、税理士の落度もあり、
この税理士は相続の申告には不慣れな税理士だった可能性が高いです。
なぜならば、
○ 相続に詳しい税理士であれば、相続開始日の残高証明書だけで申告する
のではなく、過去の通帳の履歴の数年分はチェックする
○ チェックしていれば、直前の現金引出の事実は簡単に知ることができ、
これを申告しないリスクを納税者に伝えられた
となるからです。
特に、相続開始前の数か月間における現金引出は税務調査でも
「必ず」チェックされる部分です。
だから、通帳に履歴が残っているにも関わらず、これを申告しないという
意思決定は「頭隠して、尻隠さず」と全く同じ状況です。
もちろん、相続人は税理士にも嘘を言っている訳ですから、「税理士に
言ったら申告書に載せられてしまうので、嘘をついておこう」という意思
があったことも事実です。
いずれにせよ、この事例から学んで頂きたいことは
○ 脱税はしない
○ 税理士には全ての真実を伝える
○ 重加算税がかかる場合は「隠ぺい、仮装」が前提であり、
その立証責任は税務署側にある(全ての税目に共通)
ということです。
今は税務調査の結果につき、最終交渉の段階を迎えている方も多いかと
思います。
だからこそ、安易に重加算税を認めないで欲しいのです。
中には課される必要が無いにも関わらず、重加算税を認めているケースも
多いことも事実なのです。
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